J1第17節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌【スタジアム観戦】2022.6.18
帰ってきた等々力劇場。
これぞ川崎、これぞ等々力というようなドラマチックな試合だったと思います。小林悠選手が同点弾を決めて等々力の空気を一変させました。あのバイシクルボレーを綺麗に決め切るところに、小林悠選手の復調を予感せずにはいられません。
川崎のスタメンの顔ぶれを見て思わずフォーメーションを3ー6ー1にして来るのかと勘繰ってしまいましたが、フタを開けてみれば大島選手をアンカーにして、橘田選手を左SBにしたという選手変更のみのいつもと変わらない4-3-3の布陣でした。
試合の前半は、札幌が人に付くディフェンスをし、川崎のビルドアップを制限していました。川崎の楔になるポジショニングをした選手に対して、ピッタリと張り付き、そこにボールが入っても前を向かせないようにして、ボールをまた後方に戻させる。それにより川崎はかなり手を焼いて、自陣でボールを回す時間が多くなり、GKからのロングボールを選択する機会も多くなっていました。このボールを知念選手が収めることが出来ればよいのですが、ここも札幌の岡村選手がマンマークでしっかりと蓋をしていました。
札幌の攻撃も同様に、川崎のプレッシャーを受けて、繋ぐことが難しくなったら前に大きく蹴るという形になっていましたが、川崎と大きく違う点は、狙いがあってのことか仕方なくそうなってしまっているのかという点でした。札幌は狙ってそのような攻撃をしているのでとてもポジティブな試合運びでしたが、川崎は仕方なくそのような攻めになっていたのでネガティブな試合展開になっていたように思います。
札幌の先制点はセンターライン付近からペナルティエリア付近まで、とても綺麗な形でパスを繋いで川崎の守備を崩すことに成功していました。川崎の最終ラインの裏に何度か仕掛けてラインを下げ、川崎の前線にはプレスを掛けさせて前掛かりにし、川崎全体のポジショニングを間延びさせたところへ、川崎のアンカー脇の広大なスペースを使うことで生まれた得点だったと思います。
攻めあぐねていた川崎ですが、札幌のプレスをただ受けていただけではありませんでした。選手起用にもその意志が表れていたと思いましたが、かなり流動的に選手が動き、ポジションチェンジを繰り返していたのが印象的でした。例えば、知念選手がサイドに流れることも多かったですし、そこの空いたスペースに遠野選手が入ってきて、またその空いたスペースにチャナティップ選手が入ってきて、といった具合に選手が流動的に動いて連携した仕掛けで攻め崩そうという意図が見て取れました。これは非常に良かったと思います
。守る方からするとマークの受け渡しが難しくなり、攻撃されるスペースを消すことも難しくなります。この攻撃がハマれば強くなるなという期待感はありました。
川崎の同点弾はそのポジションチェンジが功を奏した訳ではなかったのですが、大島選手をアンカー、左SBに橘田選手を起用したことが当たった形でした。橘田選手が得意のインターセプトで起点となり、知念選手にボールを入れる前の大島選手が見せたトラップは秀逸でした。橘田選手のディフェンスは寄せるだけでなく、寄せ切ってボールに対して足を出せることが凄みです。これは間合いを詰めて足を出せばいいというような簡単なことではなく、相手の次の動きの予測が正確でなければ簡単に体を交わされてしまいますので、読みの正確さと判断の速さと足の出し方の全てが高い質になければ出来ないことです。大島選手のトラップは、味方のパスがズレたので後ろ向きにトラップしたくなるところを、ボールだけは前に残して体は一度後ろに行きかけるもすぐに前を向くことで、チーム全体のゴールへの推進力を止めることなく次のプレーに移ることが出来ていました。このトラップが無ければ知念選手には良い形でパスを出す事は出来ていなかったと思います。
札幌の2点目は決めた時間もよく、何度もいつか入るんじゃないかと思わせた福森選手がキッカーを務めるCKからでした。やっぱり入ってしまったか。川崎サポーターの大半はそう思ったはずです。この思いがスタジアムの雰囲気をどこか陰鬱としたものに変えたと思います。このまま点が入らず負けてしまうんじゃないかという思いも頭をよぎる展開です。その空気を変えたのが冒頭の小林悠選手のバイシクルボレーでした。難しいシュートを、決めて欲しいタイミングで決め切る、という小林悠選手の凄みが詰まったゴールだったと思います。このゴールでスタジアムの雰囲気は一気に変わりました。そうそう!これこれ!というような、この雰囲気がどこか懐かしい感じがしたのですが、それは今季の試合に凄みが欠けていたということが示されたかのようでした。
あとの展開はハイライトからも分かるような等々力の圧倒的な雰囲気の中、川崎が立て続けにゴールを決めて勝利を収めています。この試合で川崎の良かったポイントとして、ここまで触れていませんでしたが、家長選手がとても気持ちの入った積極的なプレーを見せ続けてくれたことも挙げておきたいところです。攻守に渡って気迫がありました。今年は特に目立つのですが、飄々とプレーをし過ぎているところがあって、それがチームに悪い影響を与えることもしばしばあると私は思っています。家長選手のキャラじゃない、確かにそうです。ですが、優勝してきた年は家長選手の気持ちの見せ方が、チームを必ず良い方向に向かわせていたように思っています。勝つために一生懸命にプレーする、シルバーコレクターと揶揄されていた川崎に、この事を教えてくれたのはかつて在籍していた阿部浩之選手だと私は考えています。彼の勝利への執念や勝つために手を抜かないプレーは、初優勝した時のメンバーが共有し、田中碧選手・三苫選手・旗手選手と脈々と受け継がれてきていました。それが今季はピッチに欠けている気がしていたのですが、この試合で家長選手が見せた、プレー然り、ゴール後に見せた行動然り、勝つために必要なことを当時の阿部浩之選手のように、まわりの選手に示してくれたと感じました。
やっと「らしい」サッカーが川崎に戻ってきました。これから継続して強い川崎を見せて、優勝に突き進んで欲しいと思います。川崎の皆さん、勝利おめでとうございます!