J2第1節 ジェフユナイテッド市原・千葉vsいわてグルージャ盛岡)【スタジアム観戦】 2022.2.19

 盛岡のプラン通りの勝利。

 まさにそんな試合でした。セットプレーで得点し、そのリードを守り切る。盛岡にとっては理想的な試合ができたのではないでしょうか。盛岡の試合は初めてしっかりと観たのですが、そんな簡単な形容以上にいいサッカーをするなという印象を抱きました。

 というのも、守って守ってボールを弾き返し、前線の1トップが体を張ってボールをキープ、ロングカウンターで少ないチャンスをモノにして、リードを守り切る。採用しているフォーメーション、1トップに屈強なFWを置いていることからも、格下クラブが採用する典型的な戦術を用いているのかと試合前には思っていました。

 ところが蓋を開けてみれば、それだけのサッカーではありませんでした。選手は平均的に身長が高く、よく走り、球際の強度もあり、フィジカル的な特徴があるのは確かに堅守とセットプレーでの得点を意識させられます。それ以上に印象的だったのは、自陣でボールを奪った後、簡単にボールを前に蹴り出さず、パスを丁寧に繋ぐ意識を持っていることでした。取り立てて他チームより足元の技術が高い訳ではなくても、意識をすることであれだけ冷静に丁寧にボールを繋ぐことが出来るんだと改めて思わされる試合内容でした。簡単に蹴り出したボールをロストして、相手のプレー時間を増やすと、自分たちが苦しむことになりますから、大切なゲームマネジメントと言えます。

 一方、千葉については悔やまれる失点での敗戦となりました。試合序盤からクロスボールの際に、特にセットプレーの時に、ファーサイドを狙われていて、実際に盛岡の選手にフリーでシュートされるシーンが幾度かありました。これは盛岡が千葉の守備を分析してのことであるのは間違いないですが、千葉としてはこの点を試合中に修正したかったなという印象です。失点シーンの前にも、クロスボールを同様にファーサイドに上げられ、フリーの選手に簡単にヘディングシュートを放たれ、あわやゴールという場面を新井選手のナイスセーブによって失点をを免れています。この時点で何かしらの修正をGKも含めたディフェンス陣でしておきたかったかなというところです。ただ、セットプレーからの失点は、どんなにケアしていても起こり得ることではあるので、あくまでもディフェンス時の反省点として挙げさせて頂ければと思います。

 本当に悔やむべきところは、得点が出来ずに終わってしまったことかなと思います。攻撃においては、迫力に欠け過ぎていたかなと感じています。この試合では幾度となく、ソロモン選手にボールを預けて、ソロモン選手がボールをキープしてからのポストプレーというシーンがありました。このポストプレーだけではなく試合全体を通して言えることではあったのですが、よくサッカー解説で出てくるフレーズの「3人目の動き」がほぼ無かったように感じました。要は、ポストプレーのシーンで言えば、ソロモン選手にボールを預けてから先の展開が、選手間で用意できてなかったということです。選手それぞれが、ボールの出しどころを探してはパスを出して、探してはパスを出して・・・を繰り返していた為、ブロックを組んで守備をしていた盛岡からすれば1手先を読めば対応できることとなり、シュートに至る前に防がれてしまっていることが多かったと思います。これは日頃から共通認識を持って、オフェンス練習に取り組んでいると思いますので、試合でも実践して欲しいところです。

 また、昨季もよく散見されたのですが、尹監督の作戦・戦術の型にハマり過ぎな気がします。よく聞く話は、CFはサイドに流れないで中央に構える、SBはオーバーラップをしない、という点があるのですが、これはあくまで作戦・戦術のベースとなる型で、試合中常にこれを実行し続けるのはそれもまた違うのかなと思います。この尹監督の指示の狙いが一番大事なのであって、CFが中央に構えることで何を狙っているのか、SBがオーバーラップしないことにどういう狙いがあるのか、この狙いを意識せずにただ従うのはあまり良くないと思います。

 CFがサイドに流れることのデメリットとして、ゴールに迫った時にCFがサイドにいると、ゴール前で仕事をする選手がいなくなってしまうということが考えられます。1トップであるなら尚更です。それ以外に尹監督に狙いがあれば話は別ですが、この点を狙いとしているのであれば、ゴールに迫ってないときはCFがサイドに流れてもよいとも言えると思うのです。現にこの試合もカウンターの際にサイドにスペースがあるにも関わらず、ソロモン選手はずっと中央に構えていたため、センターサークル付近でボールを収めることは出来たものの、味方の上がりを待つことになり、その間に盛岡のディフェンスに合うというシーンが多かったです。サイドにいれば、最悪はスローインにすることが出来るので、味方の上がりに時間が掛かりそうな押し込まれているシーンでは、ソロモン選手はサイドに流れてもよかったかなと思います。

 SBがオーバーラップしないことも同じことが言えます。この試合では3バックの布陣なので、3バックの左右のCBについてになりますが、WBをオーバーラップすることはありませんでした。左右CBがオーバーラップすることのデメリットは、オーバーラップした時に万が一ボールロストして、空いたスペースを相手に使われてしまうことが挙げられます。これも時と場合を考える必要があります。相手を相手陣内深くに押し込んでいるシーンで、相手は1トップしか前線にいない時に、3枚のCBが基本位置に揃って構えている必要がありません。このようなシーンでサイドにボールを展開して攻めているのであれば、状況を見て攻撃サイドのCBがWBをオーバーラップしても良いと思います。

 これらのCFと左右CBの動きの硬直により、この試合ではWBが孤立するシーンがよくありました。せっかくサイドに展開してもWB1枚しかおらず、サイドからの攻撃が上手くいかないという状況です。左右の両CBはWBの後ろにしか構えず、1トップのサポートを言い渡されている両シャドー2枚は、センターにいる1トップの近くにいる為、サイドのスペースを使わず、WBのフォローに駆け付けてもボランチというところで、これではせいぜい横パスかバックパスかの2択しか生まれません。WB1枚でも敵陣深くまで切り込めるのであれば、話は別ですが、よっぽどの突破力がない限りは難しい話です。

 このようなことが千葉の攻撃の際の場面、場面で手詰まりのような状況を生ませて、迫力のある攻撃ができなかった要因かと私は思っています。たまたまこの試合では上手くいかなかっただけということもあるかもしれませんが、試合の状況を考えて、選手の判断で試合展開を変えることができる点ではあるので、今後の試合では、千葉の選手には型にハマり過ぎずにポジショニングをして欲しいなと思います。

 最後になりますが、盛岡のみなさん、J2初勝利おめでとうございます。